「ななちゃん、もうすぐ片付け終わるから待ってて」


カウンターの向こうでグラスを磨きながら陸が言う。


閉店後。
捲られたワイシャツの袖からチラリと刺青が見える。


テキパキと片付けをする邪魔にならないようにと、一番隅で小さくなっていた私。


手を出しても、逆に迷惑がかかりそうな気もして…結局何もできないでいた。


「陸、私先に外で待ってるね」

「いいけど…寒くない?」

「もう終わるでしょ? 大丈夫だよ」


私はそう言うと、一足先に店を出た。
週末というだけあって、店の外でも賑やかなネオンに人の数も多い。