結局この日、私は陸の店のカウンターに座っていた。
相変わらず騒がしい店内は、それなり繁盛しているように見える。
陸も忙しそうに仕事をこなしている。
「ななちゃん、いらっしゃい」
不意に声を掛けられ振り向くと、この店のオーナーが立っていた。
「今日も忙しそうですね」
「土曜日だからね。ななちゃんもゆっくりしてってよ」
「はい。ありがとうございます」
誠二さんは陸の同級生らしい。
高そうなスーツに身を包み、一見ホストのようにも見える。
それでもスマートに着こなしたスーツが華奢な体に良く似合っていた。
嫌みのない笑顔や話し方は、客商売向きだと思えた。

