どうしようもないくらい好きでした(仮)




その指輪は、龍さんが身につけるものにしてはシンプルでありふれた指輪だった。
他の指に付けられたら指輪と比べてみても、明らかに一つだけ違って見える。


「陸さん、結婚してるんですか?」

「意外?」

「ちょっとだけ」

「確かに。自分でも意外だったよ。
まさか自分が結婚する日が来るなんて。
でもさ、気がついたらめちゃくちゃ良い女が側にいてくれてて。
こいつの為に生きるのも、悪くないなって想えたんだよね」


そう言えば、いつか陸が話してくれた気がした。
龍さんはもう、旅には出ないのだと。


その時はさほど気にも留めていなかったけれど、それにはこんな理由があったのだと、私は勝手に納得していた。