「どこって言われても…。陸の事は全部好きなんだと思うんです。
私、自分でもどうしてこんなに陸に惹かれるのか、よくわかんないんですけど」
それが今答えられる正直な気持ちだった。
『全部好き』だなんて子供じみて薄っぺらいと思われたかもしれない。
龍さんから見たら、私のような女子高生の恋愛模様など、ままごとみたいに見えるのだろう。
「何かいいよね。そういうの。
俺も、もうちょっと若かったら陸と張り合えたんだけどなあ…」
龍さんは腕組みをすると、ソファーに深くもたれかかり何かを考えるように黙りこんでしまった。
沈黙が流れる。
こういうのは苦手だ。
「出会った頃はさ、余裕で『負ける気がしねえ』なんて思ってたんだけどな。
でも最近じゃあ、油断したらヤバいって気がする」
「陸が、ですか?」
「そうそう。あいつとは喧嘩こそした事ないけどさ、何て言うのかな…。
『ソウル』がさ。
油断したら、男の俺だって惚れかねない。そんな気がするよ、今の陸はね」
龍さんはそこまで言うと、また穏やかに笑ってみせた。

