どうしようもないくらい好きでした(仮)




店内に入っても、躊躇することなくお香のコーナーを探す。


店の奥へと進んで行くと、カウンターの前で店員さんと目が合った。


すかさず『いらっしゃい』と声をかけられる。
会話こそした記憶はなかったが、何度か会ったことのある人。
陸とは随分親しげに話していた人だった。


色白で華奢な身体。
赤く染められたら髪がとても印象的だった。


口、鼻、眉…おそらくは舌にまで付けられたボディーピアスが、より彼女を個性的に見せていた。


「今日は一人?」

「あ、はい。一人です」

「珍しいね。ちょっと待って、龍さん呼ぶから」


『いや、大丈夫です』と私が答える前に、彼女はカウンターの奥へと引っ込んで行ってしまう。


そして次に顔を出した時には、龍さんが一緒に立っていたのだった。