その日の奏斗はいつもと様子がちがった。
あたしが授業中に寝ちゃっても全然気づかないし、いたずらで奏斗のイスを蹴っても嫌味も言わなければ、振り向きすらしない。
目の前にいるのは奏斗の顔した人形なんじゃないかとほんとに思った。
「…奏斗?かーなーと!!」
帰りのSHRで思いきって話しかけてみる。
「…おう。」
ワンテンポ遅れた返事が返ってきた。
やっぱり心ここにあらず。
「奏斗ってばどうしちゃったの?
なんか悪いもの食べた?
それとも、テストの点数が悪すぎて何も手につかないとか?」
「点数が悪いのはお前だろ。」
ここでちゃんとツッコミを入れてくれるのはやっぱり奏斗だ。
良かった。人形じゃなくて奏斗だ。
「まぁーそーだけどー…って、それよか、本当に大丈夫?
今日の奏斗なんか変。」
眉を顰めながら言う。
「んー…あー…いや。
なんでもない。」
絶対なんかある。
奏斗は嘘つくの苦手だ。
問いただそうとしたけど、まともに返してくれる気がしなかったので、あたしはその日の放課後奏斗を尾行することにした。