「うち、バンドやりたいねん」 「…え?」 僕は思わず、聞き返していた。 バンド? バンドってあのバンド? いや、どのバンド? 沢山の疑問詞が頭の中を回る。 ひとつひとつ疑問をぶつけようとしたが、 いつになく真剣な幼馴染みの表情に躊躇してしまった。 「バンドやるために、東京行くことにしてん」 「とっ、東京!?」 「うん」 慌てている僕の隣で、彼女はやけに冷静だった。 「やりたいことって、それ?」 彼女は深く頷いた。