「おはよ、美緒ちゃん」
教室に入ると笑顔の瞳が声をかけてくれた。
「おはよう…」
「えっ、美緒ちゃん、すごいクマだよ!?」
「ああ、昨日全然眠れなくて…」
隠しきれないクマに、心配顔の瞳。
「美緒ちゃんが眠れないなんて…なにか悩みでもあるの?」
「大丈夫だよ、ありがと」
優しいなあ、瞳は。
可愛くてこんなに優しかったら、うん、翼も好きになるよね。
「先輩の事でも考えてたんじゃねーの?」
瞳の優しさに浸っていたら、そんな声が後ろから掛けられた。
「大和!」
朝から挨拶より先に、憎まれ口をたたくなんて。
「先輩、って?」
そんな大和の言葉に瞳が反応する。
しまった。
まだ瞳には先輩の事が好きだって報告してなかったのに。
「こいつ、あの生徒会長に本気になってやんの。」
なのに大和はアッサリと暴露してしまう。
しかも声が大きい。
「ばか大和!!何勝手にしゃべってんのよ!!」
信じられない!!
乙女の恋心を躊躇いなく話しちゃうって人としてどうなの。
「えっ、瞳ちゃん、会長の事本気だったの!?てっきり憧れだと思ってた!」
「う、うん。まぁ。私も気付いたばかりなんだけど…」
「ばかだろ、こいつ」
そう言って大和が瞳に笑いかける。
正確には私をばかにして笑ってるんだけど…
いつもならよくある光景。
気にも留めない。
だけど、瞳の想いに感づいてしまった私には、その光景がとても意味ありげにみえた。
いつも笑顔の瞳だけど、
大和に向けられるその笑顔は…
他の人に向けられるものと
同じもの?