彼女は、目を伏せたまま、躊躇うように唇を僅かに動かす。 俺は、彼女の言葉を待った。 「……キミが、初めてだったんだよ。思考検査に百問全問“不正解”だったの」 沈黙の中で、彼女の声だけが俺の鼓膜を震わせる。 「ワタシには、フツウの人間の思考はわからない。だから、それが理解出来る人材が、欲しかったんだ」 回転椅子を回し、俺に向き直った彼女は、ゆるやかに口角を上げ、 「ワタシとは正反対の、“正常”なキミが、ね」