トレモロホリディ

ふと疑問に思ったのは。


キャストの中に、“めぐる”という文字がなかったこと。


どうやら本名ではなく、芸名で活動しているようだ。


だから、湊君がめぐるちゃんの情報をいくら検索しても、見つからなかったわけだ。


湊君…。


ほなみを出る時は笑顔を向けてくれたけど。


食事中はずっと元気がなかった。


どうしよう…。


私、今日は部屋に行ってもいいのかな…。





『今日はひとりでいたい』



そんなふうに言われるかもしれない。


そう覚悟して、インターホンを鳴らした。


心臓がドキドキして破裂してしまいそうなほど苦しかったけど、


湊君はドアをガチャンと開けて、いつものようにおかえりと笑顔で迎えてくれた。


良かった。


私、今日もここで眠っていいんだ。


ホッと息を吐いたけれど。


なんだか違和感があった。


どうしてだろう…。


ふと考えてみる。




あ…。


わかった…!


テーブルの上に画材道具がないからだ。


いつもなら私が来た途端、画材道具を片付け始めるのに…。





今日は絵を




描いていないんだね…。