トレモロホリディ

「これでわかった?

これからお楽しみなのは、俺とミナちゃんなのー。

あんたの出る幕なんてない。

さっさと帰って」


ミナト君の声が、私の耳のすぐそばで聞こえる。


でも、どこか遠くで聞こえているようで。


なんだかボーッとしていた。


「大体俺、ホストじゃないし。

ミナちゃんに貢がれたことなんか一度もないし。

あー、愛情たっぷりの美味しい手料理なら、いっぱい食べさせてもらったけどねー。

あんたさー、人の彼女のこと、田舎者だのなんだの失礼なこと言うのやめてくんない?

彼女の良さが今頃わかったって遅いっつうの!

何を勘違いしてんのか知らないけど、ミナちゃんはあんたのことなんかすーっかり忘れて、俺と楽しくやってんだよ。

だからもう、二度と来るな!」


ミナト君がそう言った後、チッという舌打ちが聞こえて。


ガチャンと扉が開き、バタンと閉まる音がした。


あぁ…、帰ってくれたんだ…。


よ、良かった…。


私は安心して、はぁと息を吐いた。