「強くなりたいと思う理由は?」


「"守りたい人がいます。"」



…守りたい人…、



「それは、どんな人?」


「"僕よりもずっと強い人。

  だけど
  本当は誰よりも弱い人。"」


…温かい瞳でペンを動かす蛍。



蛍の言葉

ひとつ、ひとつに
なぜか涙が溢れそうになる。


「最後に、


 守りたい人のために
 自分を犠牲にするようなこと

 …蛍は絶対にしないでね」


「"その約束は出来ません。

  その人の幸せが僕の幸せです。"」


…その人の幸せが僕の幸せ、

「…」

…、前に同じようなことを竜聖に言われたな。


『麗さんが居るから
 みんな幸せなんです。』


「…蛍、これからよろしくね」



蛍の持つ懐かしさ、言葉、雰囲気、
全てに涙が溢れた。

初対面なのに
泣いているところを見られたくなくて
あたしはそう言うと、

静かに部屋を出た。