「…そうだな」
夜が白々と明け始めていた。
「…それに、もしお前に信長の元へ行かれてしまっていたら、伊賀は救えたかも知れないが、俺にとっては生き地獄だった」
「…祥之介」
「…さあ、伊賀に帰ろう、成葉」
「ああ」
祥之介に支えられ、成葉はよろめきながら立ち上がる。
「歩けるか?」
「ああ…」
と言ったものの、足に力が入らない。祥之介はそんな成葉を両手で抱き上げた。
「祥之介っ」
「この方が早く帰れそうだからな」
「すまない」
「織田が来る前に、伊賀に戻るぞ」
「ああ」
傷だらけの成葉を抱き抱えた祥之介は一歩ずつ伊賀への道を戻っていく。
朝日に照らされながら、二人が歩むその道が例えどんな末路になろうとも己の選んだ道を力強く進む祥之介と成葉であった。

−完−