とんっ。
「……え」
なにこれ。
きょろきょろと視線を動かしてみるも、状況は理解できるどころか逆に混乱するばかりで何も分からない。
「……」
「……え、あの」
「お前ほんとううざったい」
「、なん、ひっ!」
近づいてくる端正な顔に、あたしは声をあげることしかできなかった。
だってこんなこと、ありえると思うか?
漫画やテレビの中でしか見たことのないような光景が、今目の前で行われてる。
あたしの両横には樹くんの腕があり、身動きができない状況。近づく彼の顔。
えーと、つまり、これは多分、
壁ドンとかいう奴をされているわけだ。
「……え?」
「なに、うるさいな」
「いやいやいやいやいや、ありえないよね、ありえないはずだうん。え、だって樹くん近いよ。毛穴見えてるかもしれないくらい近いよ」
「………」
「まあ樹くんのほうは余裕できめ細やかな肌なんですけどもねって近いよ!!」
「お前がうるさいのが悪い。黙れ」
「ウイッス」
初めは勘違いかなって思ってた、だけどさ。
さすがに近いよね。
口から出てくる言葉はどれもいつもと同じような言葉だけど、確実に体温は上がってるのがわかる。特に顔。
黙れって言うから黙ったのに、距離は離れるどころか近づいている気がしてならない。
「……」
「ちょ、あの、あのあのあの」
「ちょっと黙ってて」
「………」
いやあああああああああああやだあああああ毛穴ああああああああ!どうすればいいのこれ!こういうの慣れてないよ!
ココロの中で叫ぶも、腕があるし動けないし、声も出しちゃいけないしってこれなんの拷問だろう。だんだん分からなくなってきたよ!

