Goodbye My Baby

数時間休んで、その日に家に帰った。

優哉は、ずっと黙ったままだったけど、階段を降りるときなんかに「大丈夫?」と気遣ってくれた。



やっぱりお腹に鈍い痛みがあった。

少し吐き気もした。



でも、「大丈夫だよ」と言っておいた。

心配かけたくないから・・・




私の家が近づいてきた頃、優哉が重い口を開いた。





「桜、あのさ」

「うん?」

「俺、ずっと考えてたんだ・・・待合室で、名前」

「名前・・・?」

「赤ちゃんの名前。考えてた」

「優哉・・・」





優哉は、ちょっと周りを見回して、そばにあった壁を見つけると、そこに指で字を書いた。

見えないけれど・・・見える。


優哉の思いが、くっきりと。




「『光』って書いて、ひかる」

「ひかる・・・」

「性別が分からないから、どっちでもいいようにした」



優哉が、もう一度、壁に『光』と書いた。



「次に生まれてくるときは、光を浴びて、幸せになって生きてほしいから」