Goodbye My Baby

そして・・・ついにその日。



両親は、出張で出かけていた。

誰もいない家で目を覚まし、何も口にせずに優哉に電話をかけた。




「桜？迎えに行くから待ってろよ」

「え・・・いいの？今日試合じゃ・・・」

「バカ、こんな時にそばにいないとか、最悪すぎるだろ」



ちょっと怒った声で、優哉が言った。




病院には９時頃着いた。

いつもの診察室とは違う階に連れて行かれた。


優哉は、同じ階の違う部屋で待っているらしい。




「じゃあね」

「あぁ」



お互いなんて言っていいか分からなかった。



私が看護婦さんに連れられて歩き出したとき、優哉が急に大きな声を出した。





「あの・・・！」




そして、深く頭を下げる。




「桜を、どうかよろしくお願いします！」




若い看護婦さんは、ちょっと困った顔になった。

そして、迷いながらこう言った。




「あなたがお父さん？」

「はい」

「二度と・・・・・・こんなことはしないでね」

「・・・はい」



少しうつむき加減で、優哉は言った。



「じゃあ、星野 桜さん、行きましょう」

「はい」



私は、優哉に軽く手を振って、背を向けた。