「遥斗ー?」
ふいにドアの向こうからそんな声が聞こえた。
「あ、山川さんだ」
山川さんとは、遥斗さんのマネージャーさん。
山川さんに気づいたにも関わらず、遥斗さんはあたしの隣から動かない。
「あの…行かなくていいんですか?」
「あぁ、そろそろ行かないとな」
ふーっと息を吐きながら立ち上がる遥斗さん。
遥斗さん、まだ撮影あるのかな。
あたしのせいで。
本当は後日撮影するはずだったシーンの撮影が早まってしまった。
あたしがいなくても撮れるシーンを…。
「遥斗さん…ごめんなさい」
あたしが謝ると、遥斗さんは一瞬考えるような顔をした後、すぐにふわり、と優しい笑みを浮かべてあたしを見た。
「今は体調が優先。陽奈は何も悪くないよ」
あたしの火照った頬に遥斗さんの大きな手が添えられる。
この人は…どこまで優しいんだろう。
「ありがとう…ございます」
「ん、ゆっくり休めよ」
ひらひらと手を振って去って行く遥斗さん。
さっきまで遥斗さんがいたところをふと見てみると、なんだか寂しさを覚える。
遥斗さんはどれだけあたしの心に入り込んでくるんだろう…。
