「いや…」
そう言って星野さんは口を噤んだ。
そして一つ咳払いをしたあと。
「俺はスタッフの打ち合わせに顔を出していた。そんな時に…安藤遥斗がお前を抱きかかえて走ってきたんだ」
と続けた。
え…安藤さん…が?
星野さんの説明を聞いた後、顔がカァッと熱くなるのが自分でもわかった。
運んでくれた、ってことに対してもだけど…。
あの時…安藤さん、あたしのこと名前で呼んでくれてた。
となると、昨日の夜部屋の外からあたしを呼んだのも…幻聴じゃなかったってこと?
「そ、そうだったんです…か」
「あぁ…。で、そのまま救護室に運んで、しばらく看ててくれたのも安藤遥斗だ」
安藤さん…。
トクン、トクンと徐々に心拍数が下がってくるのを感じるのと同時に、今度はキュンと胸の奥が苦しくなるのを感じた。
茜さんがいることはわかってる。
でも…でも…
やっぱり好きだよ…安藤さん。
「…今、1人でのシーンを撮ってるはずだ。しばらくしたら戻ってくるだろうから…会った時にはちゃんとお礼を言うように。また後でくるから…それまで休んでろ」
「はい…。星野さんも、いろいろありがとうございました」
ベッドに座ったまま頭を下げると、星野さんはあたしの頭をぽんっと撫でて部屋を出て行った。
