「本当にする、ってことで大丈夫だね?」
上の空になりがちだった打ち合わせの中で、監督のその言葉だけが不思議と耳に入ってきた。
「「はい」」
涼平さんと言葉が重なる。
「陽奈ちゃん…本当に大丈夫?」
再び涼平さんに心配されるあたし。
…そりゃあ、ファーストキスだもん。
緊張するよ。
本当はいつか好きな人ができた時のためにとっておきたかったけど…。
この映画を良いものにしたいという気持ちの方が大きくて、あたしは今回このキスシーンに臨むことにした。
「本当に大丈夫ですよ、涼平さん」
なるべく明るく、笑顔でそう言うと。
「そっか」と言って、涼平さんはあたしの頭の上に手を置いた。
