真っ直ぐな瞳で見つめてくる社長さん。
…正直、芸能界への憧れは幼い頃からあった。
でも芸能界に入ったところで、それを職にできる人なんてほんの一握りだ。
だったら安定した職に就いた方がいいじゃないか、なんて、あたしの考えは幼い頃から冷めていた。
そんなあたしの気持ちを揺るがす、社長さんの真剣さ。
あたしも社長さんの気持ちに掛けてみたい。
「…やってみます」
意を決してそう言うと、社長さんとマネージャーさんは少しだけ驚いた表情を見せた後、みるみるうちに笑顔になっていった。
「ありがとう、全力で君を売り出す。君も…努力して欲しい」
あたしははい、と返事をし、さっきまで怖そうだな、と思っていたおじさま2人と契約の握手を交わした。