少しの間、沈黙が流れる。
本当に少しの間だったはずなのに、ひどく長く感じた。
「あぁ…あれね」
再び目線があたしの目元に戻り、ゆっくりと話し出す涼平さん。
「…今まで遥斗と共演してきた新人女優は、みんな遥斗の彼女の座を狙ってて。…本気で好きな訳じゃないのに、''dropsのメンバーの彼女''っていう肩書き欲しさのために、近づいてきたんだよ。自分で言うのもなんだけど、今ちょっと注目されてる俺らdropsと話題になれば、必ず名前が売れるから…」
涼平さんは何度か顔を歪めながら、ゆっくり、詳しく教えてくれた。
肩書きって…そういう肩書きだったんだ。
でもあたしは違う。
そもそも共演者を聞かされていなかったし、どうせやるならとことん自分の力で上に上がっていきたい。
「…あたしは、違います」
つい、心の声が出てしまった。
「…遥斗も敏感になってるだけだから。絶対わかってくれるよ、大丈夫」
涼平さんはそう言って、あたしの頭をぽんぽんと撫でた。
「ありがとうございます…」
「ちょっとだけ、我慢してあげて?」
「…はいっ」
そう。
あたしは肩書き欲しさのためじゃない。
ただ、気づいたらーーー
