本日分の撮影を無事に終え、あたしは安藤さんの姿を探していた。

…どうしても今日のお礼が言いたくて。

「もう、帰っちゃったのかな…」

そう呟くと、なんとなく寂しさを感じた。

相手はアイドルなのに。
普通だったら話す機会なんてないのに。

…贅沢すぎる、あたし。






「木下…?」

ふと、名前を呼ばれる。

あたしの名前を初めて呼ぶ、その声の主は。

「…安藤、さん」

安藤遥斗だった。

「お疲れ」

「あ、お疲れ様です…」

それだけの会話を交わすと、しばらく沈黙が流れる。