今、あたしの目の前にはちょっと怖そうなおじさまが…2人。
…実はあたし、ついさっき街を歩いていたらスカウトというものをされたようで。
目の前にいるちょっと怖そうなおじさま2人は、事務所関係の人…ということしか今はわからない。
「あ、あの…!」
「木下陽奈(きのした ひな)、16歳高校1年生、A型っと…」
あたしの精一杯の大声は華麗にスルーされ、あたしの個人情報を次々と口にするおじさまのうちの1人。
「…挨拶遅れて悪かった。私はここのタレントのマネージャーをやっている星野務(ほしの つとむ)。こちらは社長の山岡哲也(やまおか てつや)さんだ」
ぺこり、とマネージャーという人と社長という人が頭を下げるので、あたしも同じように頭を下げた。
「…で、あの、あたし」
「君、芸能界でやっていく気ない?」
あたしの声はまたもやスルーされ、社長の方が今回の趣旨を伝えてくる。
「は、はあ…あの?」
「…君の可能性に賭けてみたいんだ」