スタッフに誘導され、あたしと安藤さんは向かい合う形で読み合わせをすることになった。
「…よろしく」
あたしが挨拶する前に、安藤さんから挨拶があった。
「あ…よ、よろしくお願いします」
緊張のあまり少しどもってしまった。
安藤さんは、無表情のまま。
「…よーい、スタート」
カチッ、とカチンコが鳴った瞬間、安藤さんの顔つきがガラリと変わった。
一瞬にして俳優の顔になる。
すごいなあ…
『また夢芽と同じクラスか。ここまでくると腐れ縁だな』
安藤さん演じる桐谷勝也の言葉が沈黙を破った。
安藤さんのプロ意識の高さに感動するあまり、少しだけぼーっとしてしまった。
いけない…今は演技に集中しないと…!
『こっちのセリフよ!小中高、ずっと同じクラスなんてありえない!』
あたしも夢芽という別の女の子になりきる。
『…とか言って、本当は嬉しいんだろ?』
ーードキン。
セリフを放ちながら一瞬微笑んだ安藤さんに、思わず胸が高鳴る。
初めて生で見た安藤さんの笑顔…。
