「陽奈」

2人の元に着いてすぐさま、俺は陽奈の腕を掴んで立ち上がらせた。

「え、ちょ…遥斗さん⁈」

「…いいから、来て」

驚く陽奈を、今度は引っ張り連行する。

「おい…遥斗!」

涼平が俺を呼び止めるが、そんなの聞いたこっちゃない。






そのまま少し歩くと、浜辺はひと気がなくなり、波の音だけが大きく響いていた。

「遥斗さん…どうしたんですか?」

息を切らしながらそう聞いてくる陽奈を見て、俺はやっと正気に戻る。

「…ごめん、つい」

「つい…?」

首をちょこっとかしげる陽奈を抱きしめたくなる衝動を必死に抑える。

「陽奈が涼平と仲良さげなの見て…腹立った」



『お前が他の男にキスされたって聞いて、すっげー腹立った』



勝也として言った、ちょっとクサいセリフに似たようなことが、俺の口からぽろっとこぼれた。