「カット!いやー、よかったよかった!」
監督の声であたしはハッと現実世界に引き戻される。
今のあたしはもう、勝也に想われてる夢芽じゃない。
遥斗さんを想う…木下陽奈なんだ。
さっきまで遥斗さんから放たれていた甘いセリフの数々は、全部台本通りで…夢芽に向けたもの。
そんなの最初からわかってるし、もちろん期待なんてしてない。
だけど…。
現実に戻ると、ひどく切なかった。
あたし、いつの間にかこんなにも遥斗さんのこと好きになっちゃってたんだ。
遥斗さんに想われてる夢芽はいいなぁ…なんて、
自分が演じてた役に嫉妬してしまう程…。
