鬼のようなレッスンの日々をなんとか乗り越え、いよいよ今日は今回の映画関係者との顔合わせ。

あたしは共演者を知らされていなかった。

知っていることといえば、人気マンガの実写映画のため、俳優陣が豪華だということ。
そんな中に1人飛び込もうとしている新人のあたしは、ひどく緊張していた。






そしてついに顔合わせをする部屋のドアに手をかけた。

「…失礼します」

ガチャ、とドアを開けて中に入ると、そこには今まで見たことのない風景が広がっていた。

細長いテーブルにたくさんのイス。
たくさんの芸能人にスタッフさん。
すごくシンプルな部屋なのに、華々しい。

「木下陽奈です。よろしくお願いします」

そう言うと、こちらの席に。と1人のスタッフさんに指示され、あたしはそこに腰掛けた。






張り詰めた空気の中心臓の音が鳴り止まないまま待っていると、最後の1人が部屋に入ってきた。

「…失礼します。本日はよろしくお願い致します」

丁寧に挨拶するその人は、あたしがこの間ぶつかってしまった…あの人。

…そっか。
映画出演が決まっていたからあの時レッスン場にいたんだ。

プロでもレッスン受けるんだなあ。

「では、全員揃いましたので自己紹介を…」

スタッフさんの指示で次々と自己紹介をしていく。