とろける恋のヴィブラート

「すみません。もしかしたら私、柴野さんに迷惑かけたんじゃ……」


 ホテルを訪問した翌日、早速朝イチで奏は柴野のところへ呼び出された。


 ――直接御堂本人からピアニスト変更の依頼があったそうだね、社長からさっき話は聞いたよ、奏も不本意だと思うけど……僕は君を信じてるから。


 ――……はい。

 
 今朝の会話が脳裏にふとよぎる。


 仕事の話をする時は恋人ではなく、あくまでも会社の上司の顔だ。



(私を信じてる……)


 一体何について信じてるというのか不明のまま、結局、奏が交流会のパーティーで御堂の伴奏者を務めることに決定してしまった。