とろける恋のヴィブラート

 初恋は甘酸っぱくてレモンによく例えられるが、奏はまるでハバネロを食わされて、その激辛に目も覚めるような気分になった。


(なにが“当日のピアノ伴奏はお前がやれ”よ、偉そうに~! 絶対絶対、頼まれたってやらないんだから!)


 バッグの中にしまった資料を取り出して、いっそのことぐちゃぐちゃに丸めて捨ててやろうかと考えたその時、御堂の胸に引き込まれた時の香りが脳裏を過ぎった。


(なんか……いい匂いだったな)


 結局、奏はまたバッグの中に資料をしまって大きくため息をついた――。