とろける恋のヴィブラート

「もしかして、もしかすると……御堂さん、ですか? 城海大付属の……?」


 自分の記憶にある御堂は、もう少しあどけなさの残る容姿をしていた。けれど、今、自分の目の前にいる人物は、その記憶よりもだいぶ大人びて、当時印象的だった淡褐色の瞳と、灰色がかった茶色い髪が相変わらず端整な顔立ちを際立たせていた。


「青山奏っていうのは、お前か?」


「え……? は、はい……そうですけど、あの……私のこと覚えててくれたんですか?」


 奏は恐る恐る尋ねると、御堂は見覚えのある笑みでニヤリと笑った。


「あんな下手クソなピアノ、忘れたくても忘れられない」


「なっ……あの時も御堂さん、そんなふうにいきなり失礼なこと言いましたよね?」


「下手クソに下手というのは、最高の褒め言葉だろ」


(な、なななななんなのぉぉ! 初恋相手との再会ってもっとこう、ドラマチックなものじゃないの!?)


 奏は頬を引きつらせて、やり場のない怒りにプルプルしながら拳を握り締めた。