とろける恋のヴィブラート

「相変わらず下手クソなんだな」


 廊下を歩きだした途端、背中に突きつけられた不躾な言葉に、奏は肩をびくりと跳ねさせて立ち止まった。


(下手クソって……私のピアノのこと……だよね?)


「あの、失礼ですけど! それって、私のピアノのこと――で、す……か……って、ええっ!?」


 廊下全体に響き渡るくらいの驚きの声をあげ、奏は振り向いた先の人物に言葉を失った。