とろける恋のヴィブラート

「美味しいでしょ? これ、北見さんのとこで仕入れたフランス原産のシャンパーニュなのよ」


「こんなにおいしいなんて……ん? シャンパーニュ?」


 目線のところまでグラスを持ち上げて中をよく見ると、一見ジュースのように甘くフルーティな香りがして、細かな気泡が数珠つなぎに連なっている。


「御堂さん!」


「……ぐ」


 そのドリンクがアルコールであることを認識する方が遅かった。真っ赤な顔をした御堂が、バタンと派手に音を立ててその場に崩れ落ちた。


「あーカイリがお酒飲めないの忘れてたわー! あははは」


「もう……」


 そんな様子をまったく歯牙にもかけずに瑞希は笑い飛ばしている。瑞希の陽気な笑い声を聞いていると怒るに怒れなくて、奏は思わずため息をついた。


「まったく、様ないなカイリ。まぁ、こうなることわかってて面白そうだから何も言わなかったけど、私の専用ハイヤーで送ってあげるから、君はカイリについていてくれるかな?」


「はい。ありがとうございます」


 奏は、ぺこりとエドガーに頭を下げると、ポンポンと大きな手が頭に乗せられた。そんな温かな手が、少しだけ御堂に似ている気がして、奏は思わず頬を緩ませた――。