とろける恋のヴィブラート

「あぁ、当たり前だ。これでわかっただろ? 俺はウィーンには帰らない。日本でやっていく、こいつと二人で」


 ぐいっと力強く肩を引き寄せられ、奏が御堂の顔を見上げると、それは真剣そのものだった。


「…………」


 エドガーは何も言わず、じっと御堂の眼差しを見つめ、しばらく考え込んでいた。


「本当は今日、ここに来るの嫌だったんだ」


「え? どうしてですか……?」


 エドガーの言葉に、奏は不穏なものを感じて動悸が走る胸を抑えた。すると、エドガーは不貞腐れた表情をしたものの、すぐに口元を歪めて笑った。


「だって、カイリがコンサートで失敗するわけがないじゃないか、初めからわかっていたよ。そんな負け戦にわざわざ行くなんて、ちょっと面白くなかっただけさ」


「ちょっと! だから時間になってもホテルの部屋から出てこなかったのね!? まるで子供ね」


 プリプリと目くじらを立てて瑞希が怒って鼻を鳴らすと、エドガーが御堂の前に一歩踏み出した。