とろける恋のヴィブラート

「信じられない……こんなに人が」


「あぁ……」


 二人が呆然としていると、人だかりの中から一人の女性が手を振りながら近づいてきた。


「青山せんぱーい!」


「高梨さん?」


 奏の後輩である高梨美香がぜいぜいと息を切らせながら言った。


「ちょっと遅れちゃいましたけど、事務所に所属してるアーティストさんたちを全員連れてきました!」


「ええっ!?」


 見ると、御堂に憧れを抱いているベルンフリート所属のアーティストたちが客席に座っている。


「本当は今日、打ち合わせのあるアーティストさんとかもいたんですけど、柴野さんが予定を変更してくれて……。柴野さんもコンサートに誘ったんですけど、遠くで見守るとかなんとか言って欠席です」


 首をかしげる美香だったが、奏は柴野の心遣いに温かいものを感じた。


「奏……」


 挑戦的な笑みを口元に浮かべながら、御堂が奏の背中に手を回した。


「今までで一番最高の演奏にしてみせる。いいな?」


「はい……!」


 奏は、見下ろす御堂の強い眼差しを受けると、力強くうなづいた――。