とろける恋のヴィブラート

「御堂さんのヴァイオリンを独り占めするなんて、そうはさせないわよ?」


「っ!?」


 誰もいないと思っていた客席の向こうから聞き覚えのある声がしたかと思うと、奏はビクリとしてその声の方へ振り向いた。


「き、杏子さん!?」


「久しぶりね、ここの野外ステージ、場所がわかりづらくて遅くなっちゃった。もっとわかりやすい地図をチラシシに載せなさいよね」


 先日の結婚式のクライアントだった片山杏子が、ぺこりと会釈をする旦那の腕に絡みついてにこにこと笑っていた。


「杏子さん、来てくれたんですね!」


「御堂さんのヴァイオリン、全部独り占めできたら良かったのにねぇ……残念ながら、御堂さんのファンは、思いのほかたくさんいるみたいよ? ほら」


 杏子が指を指す方向を見ると、だんだんと客席に人が集まってきていた。