とろける恋のヴィブラート

※ ※ ※

 森林公園の野外ステージは大きくもなく、収容人数は三十人といったところだった。真っ白なステージが印象的な会場で、客席には長椅子が設けられている。


「御堂さ――」


 ステージの上で、無心でヴァイオリンを奏でる御堂に声をかけようとして、奏は思わず息を呑んだ。


「う、そ……」


 今まで張り詰めていた緊張の糸が、頭の中でぷつっと音を立てて切れた気がした。そして、その次に愕然とした底知れぬ絶望感が奏を襲った。


 今、奏の目の前に広がっているのは誰もいない閑散とした客席にたった一人、御堂がステージの上でヴァイオリンを弾いているという光景だった――。


(どうして……)