とろける恋のヴィブラート

 ※ ※ ※

 運命のコンサート当日――。


「ふぁ……」


 あれから練習は深夜にまで及んだ。御堂に車で送ってもらってからずっと、奏の心臓は妙な緊張感で支配され、ベッドの中へ入っても熟睡することができなかった。


 噛み殺しそこねた欠伸をしているとその時、テーブルの上で携帯が鳴り出した。


「はい」


『俺だ』


「御堂さん? おはようございます」


 御堂の低い声がすると、寝起きの頭がしゃきっと冴える。


『俺はこれからコンサート会場へ行く』


「え?」


 時計を見ると、開演予定までまだ四時間以上はある。


『先に行って場の雰囲気に慣れておきたいんだ』


「でも、御堂さん……あの公園でたまに練習してるって――」


『うるさい、じゃあな』


 初めての場所でもないのに、その場の雰囲気に慣れるという御堂の言葉が一瞬理解できなかった。けれど、いつもと違うこわばった声音に、心なしか緊張しているような気がした。


「よし!」


 奏は気合を入れると、シャワールームへ入っていった――。