とろける恋のヴィブラート

 森林公園は、先日エドガーの公演が終わってたどり着いた場所だった。御堂も野外練習をしたことがあると言っていた。


 奏は、柴野が何気なく言った言葉でこの場所を思いついた。仕事が終わってすぐに公園の管理会社に連絡を取ると、快く場所を提供してくれた。それから奏は急いでチラシを完成させ、思いつくままチラシを配り歩いた。


「ふっ……お前のその勝手な思いつきの良さ、嫌いじゃない」


「うぅ、御堂さんに言われたくないですよ」


 頬を膨らませる奏の頭にポンっと御堂の温かな手が乗せられた。


「ありがとうな……俺は演奏家として必ずこのコンサートをやり遂げてみせる」


「はい!」


「そうと決まったらお前はこの“Bande”のピアノパートの譜面を全部把握しろ、それから音を合わせる。それが終わったら調整だ」


 御堂は意気揚々とソファを立つと、すっと奏に手を差し伸べた。


「この曲は、お前にしか弾きこなせないんだ……」


(私にしか……)


 奏は、そっとその手に自らの手を乗せ、御堂の期待に応えるべく、こくりと笑顔で頷いてみせた。