とろける恋のヴィブラート

「もう決めたことだ。お前には関係ない」


(嘘……御堂さん、きっと何かを隠してる)


 見えそうで見えない御堂の胸の内に、奏は歯がゆさを覚えた。


「本当にウィーンに帰りたいなんて、御堂さんそんなこと本当は思ってないですよね? どうして本当のこと言ってくれないんですか?」


 御堂が唇を噛み締めると、そんな様子を窺っていたエドガーが口を開いた。


「うーん、君、どっかで見たことある顔だと思ったら……ピアニストの青山奏さんかな? 最近じゃあまり音楽界には顔を出さないと思っていたけど……なるほど、君たちはそういう関係だってことだね?」


「そういう関係……?」


「Schaetzchenだよ」<恋人>


 真っ赤になっていく奏を見て、エドガーは小さく笑った。


「まぁ、君みたいに可愛くて音楽にも長けている女性なら、カイリの恋人としては申し分ないけど……運命は時に残酷だからね」


「じゃあ、私がその運命を変えてみせます」


「え?」


「はぁ?」


 エドガーと御堂が同時に驚いて、それぞれが奏に注目した。