とろける恋のヴィブラート

「あ……」


 その人物は、先程までステージの中央で一心不乱にタクトを振っていたエドガーだった。近くで見ると、物腰柔らかそうな優しい感じのする中年男性だが、どことなく大人の色気を感じさせる雰囲気を感じた。御堂と同様背が高く、親子であると一目瞭然だった。


「カイリにこんな可愛い友人がいるだなんてね、どうしてもっと早く紹介してくれなかったんだ」


「この人はベルンフリート日本支社の社員だよ。マネージメント部の」


「それはそれは……ある意味身内というわけだね」


 エドガーは癖のある日本語で、ふぅんと意味ありげに笑った。


「カイリの探していた音の持ち主でもあるっていうことかな?」


「おい、余計なこと言うなよ」


 御堂が低い声で制すると、図星を突かれた御堂の反応にエドガーが唇を歪めた。


「なるほど、惚れた相手を守るためなら、自らが犠牲になる選択をしたんだね」


「え……? 犠牲に? 御堂さん、どういうことですか?」


 奏がエドガーの言葉に反応すると、御堂はチッと舌打ちをした。