とろける恋のヴィブラート

「あの! すみません、私、その……アッヘンヴァル氏の知り合いで――」


「はぁ? どういった知り合い? 親類の方?」


「えっと……」


 あまりこういう嘘をつくことに慣れていないせいか、機転の利かない自分が嫌になった。


 たどたどしい奏の返答にますます警備員の表情が訝しげに変わっていく、絶体絶命を感じたその時――。


「厳密に言うと、アッヘンヴァルの息子の知り合い……だな」


「っ……御堂さん!?」


 その声に驚いて振り向くと、“どうしてここにお前がいるんだ?”と鋭い目で問いかける御堂が腕を組みながら立っていた。


「これは、御堂カイリ様、お疲れさまです。この方はお知り合いということで……」


「あぁ、間違いない」


「それは大変失礼致しました」


 そいうと、深々と頭を下げ、警備員はそそくさとその場を去っていった。