とろける恋のヴィブラート

「北見さん、ありがとうございました」


 約一時間ほどの演奏を終え、奏が北見のところへ挨拶に行くとカウンターに一人、髪の長い女性が座っていた。


(あ……)


 奏は、ひと目見ただけで彼女が桐島瑞希だということを悟った。


「あなたが青山奏さんね? はじめまして、桐島瑞希よ」


「あ、青山奏です……はじめまして」


 瑞希もまた海外暮らしが長く、御堂同様にエキゾチックな雰囲気を醸し出していた。思わず瑞希の妖艶な色気に目を奪われていると、北見がいつものノンアルコールのカクテルを奏に差し出した。


「お疲れさまー! 今夜も良かったよ、ありがとうね」


「ありがとうございます」


 冷えたグラスを受け取ると、指先にひんやりとした感覚が染み渡る。


「北見さん、私、奏さんと二人で話したいから席外してね」


「はいはい、ごゆっくり」


 北見は、やれやれというように肩を竦めてにこりと笑うとカウンターの奥へ消えていった。