とろける恋のヴィブラート

「今日の演奏、本当によかった……他の奴らに聴かせるのが惜しいくらいだった。はは……演奏家がこんな発言するなんてな、奏……俺の役目は終わったんだ」


「終わって、御堂さんはどうするんですか?」


「……ウィーンに戻る」


 まだ恋人同士でもないのに、まるで大失恋をしたような崩壊感覚だった。胸にぽっかりと空いた風穴から虚しい風がびゅうびゅうと吹き抜ける。


「そんな、そんな……勝手なこと言わないでください! 勝手に専属にして、勝手にこんな気持ちにさせて……それで用が済んだからウィーンに帰るって……あんまりです!」


 御堂を責めても仕方のないことだとわかっていても、悲しみから怒りへ変わっていく感情を抑えることができなかった。