とろける恋のヴィブラート

 G線上のアリアは、癒しの曲の代表でもあるが、音の強弱やテンポによって鳥肌が立つ感覚を覚える。


 音符的には難易度の低い曲だが、演奏家の表現力と演技力によって聴こえ方が全く違う。そんな中、様々な点において御堂のG線上のアリアは完成度の高いものだった。


「おい、いつまで間抜け面してるんだ」


 長いヴィブラートを響かせて曲が終わっても、奏はその余韻に恍惚となりながら、夢現な気分からなかなか抜け出すことができなかった。


「御堂さんの音は、まるで媚薬ですね……心地よくて、声もでないです」


 いつまでもうっとりとしている奏に歩み寄ると、御堂はすっと紅潮している奏の頬に手をあてがった。御堂の手はいつも温かく、ずっと触れていて欲しくなる。