とろける恋のヴィブラート

『そういえば、わざわざ日本にまで行ってお前の探していた音というのは見つかったのか?』


「……あぁ、ようやくな」


『だったら、もう思い残すことはないんじゃないか? そろそろ本社で腰を据えるのかと思ったら、いきなり日本へ行くだなんて、お前の思いつきな行動はあまり褒められたものじゃないぞ』


「あんたに似たんだろ」


 昔からエドガーは、祖父の意向をカイリに勧めていた。


 今までカイリは言われるがまま、様々なハイソサエティな人たちの前でヴァイオリンを弾いてきた。政治家や大富豪や各界の著名人、エドガーの言う理解のあるオーディエンスというのは彼らの事を指す。


 御堂は、そんな雲の上のような人たちから演奏する度に絶賛され讃えられてきたが、まるで義務のように演奏を聴かせて、賞賛されての繰り返しにどことなく気持ちが冷めていた。


 けれど、日本に来てから病院の患者たちや、結婚式の来客の前で初めてヴァイオリンを弾いた時、今までに感じ得なかった高揚感に、演奏家として初めてやり甲斐という喜びを感じた。