とろける恋のヴィブラート

『お前は今、日本で活動しているらしいな。瑞希から聞いたよ』


「……あのおしゃべり女」


『あんなに嫌がっていたベルンフリートの事務所にも所属しているそうじゃないか、お祖父様もさぞ喜ぶだろう……まぁ、日本の支社のようだが』


 今は亡きベルンフリート音楽事務所の創立者である御堂の祖父、ガブリエルは、御堂が本社であるウィーンの事務所に所属することをずっと切望していた。
しかし、御堂は祖父の最期の時まで首を縦に振ることはなかった。


『カイリ、レベルの高いヴァイオリニストには、それなりに理解のできるオーディエンスが必要だ。お前が本社へ戻ればきっとそれがわかる。今まで世界中を回って来てわかっただろう? お前のいるべきところは日本じゃない』


 またその話か――。



 久々に会話ができたと思ったら、結局わだかまりの根源へ行き着いてしまう。御堂はため息をついて椅子に座った。