とろける恋のヴィブラート

※ ※ ※

「御堂様、お疲れさまでした。この後は特に予定も入ってませんので、こちらの控え室も時間を気にせずご利用ください。何かお飲み物でもお持ちしましょうか?」


「いや、いい」


 御堂は、軽く片手を上げて従業員の申し出を断ると、控え室のドアを閉めた。


 余興で演奏した曲はうまくいった。奏もなんとか自分の音を取り戻せたようだった。まだ彼女のピアノが生きていたことに御堂は、ほっと人知れず安堵していた。



 グラスに水を注いで飲み干したその時、テーブルの上で携帯が鳴っていることに気づく。


「…………」


 御堂は画面に表示された名前に眉を潜め、一瞬出るのを躊躇ったが、結局通話ボタンを押した。


「Guten Tag?」<もしもし?>