とろける恋のヴィブラート

(この感覚……知ってる)


 無我夢中でピアノを弾いていた時の記憶の扉から飛び出して、今まで忘れていた感覚が全身に蘇る。


 緊張が不安を煽り、思うように表現できなかったピアノ。奏は、御堂に手を引かれるようにして、今まで乗り越えられなかった壁をようやく越えた気がした。



 二重奏は五分程度で、奏と御堂が最後の音を響かせて終わると、スタンディングオベーションが沸き起こった。

 花婿花嫁よりも目立ってしまうのではないかと心配になったが、当の本人たちも感動して夢中で手を叩いていた。


(間違えずに弾けた……私、できた……自分のピアノ……弾けた)


 奏は、拍手に包まれながら、呆然と信じられない気持ちでしばらく動けなかった――。