とろける恋のヴィブラート

「お前……いつもしてたあのネックレスしてないし、あの男となにかあったのかって……気になるだろ馬鹿」


 ドキドキと鼓膜を打つ心音が、御堂の腕に伝わってしまうのではないかと思うくらい高鳴っている。


「俺も大概馬鹿だな、そんなことで集中力を乱されて……全部、お前のせいだ」


 切なげに振り絞るその声は、小さく掠れていた。御堂自身、こんなことを言うなんて不本意だったに違いない。


「御堂さん、濡れますよ」


 やんわりと抱きすくめる腕を解いて、奏は御堂に向き直った。


 上流階級のヴァイオリニスト御曹司が、ずぶ濡れになって自分を見据えている。そう思うと滑稽で、奏は思わず小さく笑った。


「私、柴野さんとは別れたんです」


 何も考えていなかったはずなのに、奏の口からそんな言葉がポツリと出た。