御堂と奏でるピアノの旋律は、まるで綿に水が染み込んでいくようにじんわりと胸に染み込んでいった。自分のピアノを存分に表現できる開放感に、奏は嬉しくてたまらなかった。
(トラウマなんかに負けない……)
そんな喜びに浸っていたその時――。
「痛っ――」
ズキリと小指に鈍い痛みが走った。
優雅に流れていた旋律がピタリと止まり、一気に気まずい雰囲気に包まれてしまう。夢から覚めた現実が、重く奏にのしかかる。
「……お前、その小指どうした?」
「え……?」
「小指で押さえる鍵盤の音だけが弱い、俺の耳を侮るなよ?」
咄嗟に言い訳を考えたが、御堂の視線に捉えられてしまうと、奏は神妙な面持ちを浮かべた。
「ちょっとドジして指を痛めただけです。心配しな――」
「どうしたかと聞いている」
奏の言葉を切って、御堂が険しい表情で奏を見据えている。しかし、奏はうまく言葉が見つからずに、ただ俯いて押し黙るしかなかった。
(トラウマなんかに負けない……)
そんな喜びに浸っていたその時――。
「痛っ――」
ズキリと小指に鈍い痛みが走った。
優雅に流れていた旋律がピタリと止まり、一気に気まずい雰囲気に包まれてしまう。夢から覚めた現実が、重く奏にのしかかる。
「……お前、その小指どうした?」
「え……?」
「小指で押さえる鍵盤の音だけが弱い、俺の耳を侮るなよ?」
咄嗟に言い訳を考えたが、御堂の視線に捉えられてしまうと、奏は神妙な面持ちを浮かべた。
「ちょっとドジして指を痛めただけです。心配しな――」
「どうしたかと聞いている」
奏の言葉を切って、御堂が険しい表情で奏を見据えている。しかし、奏はうまく言葉が見つからずに、ただ俯いて押し黙るしかなかった。



